競技を辞める理由:3年分の感謝



3年間の筋肉勝負の世界から離れたわけですが、

簡単に理由を説明すると、
「気が済んだから」*という理由です。

*私がいつも考え方で参考にしている、元陸上選手の為末大さんの言葉を、大変僭越ながらお借りしています。私の今の気持ちを表すのに、しっくりする言葉です。




でも色々思うことはあったわけで、今回は頭の整理を兼ねて、その理由をまとめてみます。

【物事の辞め時を考えてみる】コンテストを辞める時 (2019/01/06)

ここで、辞め時となりえるものを3つ書いてみました。


1.新しい世界が自分で見つけられなくなった時

2.新しい世界を見る機会が手に入れられなくなった時

3.成長を犠牲にして執着の心が優ってしまった時

結局当てはまる理由は、これの全てという感じなんだと思います。

これを、下記のように言い換えて説明したいと思います。



1.競技への価値観の変化

2.時間的制約

3.求めるものを最小限に





1.競技への価値観の変化


あくまでもこれは私の価値観ですが、競技からの報酬は過程から全て得ていて、人為的な”順位”というものから得るものがなくなってしまいました。


この価値観を、オールジャパンの決勝の舞台を見て再確認しました。
決勝の舞台に並んだ私を見て、私は誰に勝った気持ちもしなかったし、
負けた気持ちもしなかったんです。

それは単純に、やっと終わった~!という気持ちだけでした。



みんな凄いし、みんないい。
ビキニフィットネスという1つの基準に基づいて決めているだけなんです。


これは、英語力を、ボキャブラリーの数で測ったり、
暗算のスピードで数学の能力を測ることと、
同じようなことだと思います。


ただ、大会というものがあるから必要になる以下のようなプロセスから得られる学びはとても多いです。

・極限まで絞り込むこと
・頭を使ってバランスよく鍛えること
・生活の中で最適な習慣を作ること
・締め切りがある緊張感


そう考えていたら、

競技で1位になること、
競技で予選を突破することと、

その本質的な価値の違いが、理解できなくなりました。




2.時間的制約

昨年末に起業した仕事に、今私が持っている時間を集中させたいと思ったことが2つ目の理由です。

トレーニングも、大会も、やろうと思えばいつでもできます。

けど仕事は、今じゃないとできない。
今のタイミングを逃したら、機会を逸してしまうかもしれない。



去年のアーノルドクラシックヨーロッパの経験を経て、今年は新しい想いで心機一転望んでいたのですが、知れば知るほど、やるべきことが見えれば見えるほど、中途半端に続けて得るものはないと感じていました。


ステージに上がる程度の体は、作ろうと思ったら作れます。

ステージに上がる理由は人それぞれだと思いますが、
やるべきことが見えながら、中途半端になってしまうのは、記念受験のようで、私にとってはあまり意味がないものです。

確かにこれは、私にとってはずっと趣味だったわけですが、真剣な趣味でした。


フィットネスとはいえ、1年中体づくりのことを考える覚悟で取り組まないと、
競技的な成長はなく、自身の学びも少なくなることが一番怖かったです。


また、週4-5日のトレーニングを、年末・年始、旅行中、出張中、崩さないようにして

毎日100-120gのタンパク質摂取をオフもオンも続け

そうすると、行先も、思考も、人付き合いも、ある程度制限せざるを得ません。




自分がこれからもその資源(=お金、時間、そして情熱)を、
自分が納得するだけ、傾け続けられるか?


それを考え続けていたら、”今はここじゃない”ということが、腑に落ちてきました。





3.求めるものを最小限に


筋肉は好きなので、できることならもっと大きくなりたいですし、絞り切った身体も、個人的にはとても好きです。

単純に、やるべきことをやり、成果が出ていることを視覚で確認できるのは、日々の自信になって気持ちがいいです。



ですが同時に、執着心や焦燥感が生まれ、客観的に考えてみると、とてもどうでもいいこと(縫工筋のカットが、皮膚感が、三角筋が、とか。笑)に振り回されそうになる自分がいます。

そういう細かなことを突き詰めることが芸術だと思いますし、
詳細にこだわる姿勢はとても楽しいです。


ですが、今の私の置かれている状況、自分がありたい姿を考えると、
”求めるものをできるだけ少なくすること”が今の私には必要なことだと感じます。



森の中で、自給自足で暮らし、シンプルに生きることを提唱しているヘンリー・D・ソローという作家さんは、
国富論を書いたアダムスミスが、分業によって生産した富を最大限消費することが豊かとしたことに反論し、”人はそっとしておけるものが多ければ多いほど豊か”
ということを言っています。
必要を最小限に抑えて、経済負担の増大の悪循環を避け、精神的な豊かさを得るという発想です。*

*出典:ウォールデン 森の生活(上)ヘンリー・D・ソロー



世界や身近な社会で起きている問題を見ていると、
現在の資本主義社会、物質主義的社会に強い疑問が沸いてくると同時に、
自分がどう生活したいかがはっきりしてきます。


もっと前へ。
もっと上へ。
もっと多く。

これから価値を持つものは、
こういった資本主義的な”成長”の因子を持たないものだと感じます。

本当に美しいもの、価値があるものは、そこに存在するだけで人の目に飛び込んでくる。

そう思うと、創造物・考え方・生活、全てにおいて、空間・余白を作ることが現代の1つのテーマのようにも感じてきます。




一見、この項目と、他の項目が矛盾するように思われるかもしれません。

「自分が成長できるところに時間を費やしたいのに、”成長”の因子を持たないようにするってどういうこと?」

この空白を作れるようになることが私にとっての”成長”なんだなぁと思っています。


順位や業績、報酬など、目に見える形で外部からもらえたら、それはそれで嬉しいですが、

長い人生の中、”成長”の定義も、”成功”の定義も自分でできるようになる方向性が幸せだとだと感じます。


ついつい、チャンスを見つけると取りにいってしまう欲張りなので、
来年はどう変われるか、楽しみです。



より自然に近い状態で。



ということで、競技でいただいた賞状は全て処分し、メダルはVshapeに全て寄贈しました。
サプリの在庫も全て処分し、トレーニングウェアも半分以下にしました。

大切な思い出は心の中にしまっておくことにします。*^^*





ビキニフィットネスに対する想い


「辞めるのは自由だし、そんなに一生懸命説明しなくていいよ(笑)」
と思ってる皆さん。
いえいえ、私は、私自身のために必死で説明しています。


私はまだビキニフィットネスが好きです。

好きだけど辞めるのがベストであることを腑に落とすためには、理由でがんじがらめにしないといけないのは、自分の弱さだと思います。




昨年ヨーロッパで国際大会に出場する機会があり、
ビキニフィットネス、IFBBエリートリーグの本場を見て、今までこの競技に抱いていた価値観が壊れて初めてスタート位置に立つことができました。



今までの自分が全て否定された感覚でしたが、同時に愛着と興味が増しました。
鳥肌が立ったし、見ていて涙が出るほどかっこよかったし、
その世界にもっと立ちたいと思いました。

先日まとめを書きました。
競技<文化。国際大会の経験で学んだ、ビキニフィットネスについての個人的考察



ビキニフィットネスの本場、欧州のIFBBエリートリーグは、米系のIFBBプロリーグとは全く違う独特の世界です。

しっかり前を向くシンプルなポージング、
逞しい下半身や背中のマッスル感を評価する基準もとても好きです。

そして、衣装の形もそれぞれに意味があり
米国や日本とは違った美術的センスで、素晴らしいモノづくりをしている製作元が多くあります。

ロシア、東欧、中央アジアをはじめとした旧共産圏、
そこに、スペイン、ドイツ、イタリア、イギリス、そしてノルウェーやスウェーデンなどの北欧、バルト三国なんかも加わるから、選手団を見たり、実際に話したりして、国ごとの文化的な違いに触れるのが面白い。


アジアからは中国勢力の進出が著しく、資金の流れやIOC公認を目指すIFBB本体の動きも見ていて興味がつきない。


多様性がより幅広く存在する世界だと感じており、
それがエリートリーグ側に興味がある理由です。




だから、正直少し寂しい気持ちはあります。


ヨーロッパのあの世界にいつかまた戻りたいと思っていたし、

あの決勝の舞台で、

あのヨーロッパ訛りの英語で、

毎年変わり映えしないステージ音楽で、

ジャパン、アキスギヤマ!とコールされるところを何度も妄想しました。(笑)





知れば知るほど奥が深くもっと好奇心を掻き立てられて、

これだけ私の人生の変化に寄与してくれて、

素敵な人々との出会いを与えてくれた場所でもあるから、

猶更、中途半端には終わらせられないと思っていました。




そんなこんなで、オールジャパンでは、一生懸命やってきたものの区切りというものを求めて、身体の準備と心の準備を一緒にやっていました。



応援に来てくれた人には、事前にこれで終わりということは伝えていたし、
ステージに上がりながらも、終わった後も、その気持ちは変わることはありませんでした。


この3年間、執着と愛着の間のような愛すべき世界に、今までにない高い身体性と精神性を保って、濃密に関われたことに、本当に価値を感じています。


応援してくださった皆様、一緒に頑張ってきた仲間達、ありがとうございました。




これからは、競技向けレンタルビキニを通じて、1人でも多くの人がコンテストに挑戦できるチャンスを作るべく、この世界に恩返ししていきたいと思います。
↓↓
http://leanersbikini.info/





「数年したらまた戻ってきたら?」
なんて言っていただける方がいるのは、とてもとても嬉しいことです。

もし、またやりたいと思うことがあるとしたら、どんな時なんだろう・・・?

私自身も、興味があります。^^



ではでは!





コメント

  1. インスタからきました。
    あきさん若いのにしっかり考えていて尊敬します。
    競技お疲れさまでした!!
    次のステージでのご活躍お祈りしております。

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    1. 読んでいただき、コメントまでありがとうございます。
      考えないと気がすまないタイプです。(笑)
      どこに行っても頑張ります!

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