競技<文化。国際大会の経験で学んだ、ビキニフィットネスについての個人的考察



今までオン・オフとトレーニングをさぼったことはなかったので、競技を終えた今、
トレーニングをやらないという状況に、自分がどう感じるかは未知の世界でした。

きっとある程度でむずむずしてくるんだろうな、、、、と思っていました。

大会後、1カ月以上トレーニングしませんでしたが、何も思いませんでした(自分でもびっくり)。
ジムは完全に幽霊会員状態・・・・この私が!(笑)

辞めるのは、私にとって自然でベストな決断だったということがしっくりしています。



そんな状態なので、この3年間取り組んだ”ビキニフィットネス”というものの感覚を忘れてしまう前に、この3年間で考えたり、経験したことを記録に残しておきたいと思いました。



ヨーロッパのビキニフィットネスと日本のビキニフィットネスは別モノで、
日本とヨーロッパの壁はまだまだ厚いと感じます。





何がそんなに違うのでしょうか?

骨格やスタイル、髪質など含め、様々な要因がありますが、その中でもあまり語られないことが1つあります。

ヨーロッパのビキニフィットネスは、競技やショーである以上に、文化
という側面が強いということです。




人、モノ、空気、、、

ビキニフィットネスの強豪、東ヨーロッパ・ロシア周辺で長い歴史の中で構築されてきた、”女性らしさ”、”美しさ”の感覚が、競技の世界感を決めています。

この世界感は、アメリカとも全く異なり、同じヨーロッパの、イギリス、スペイン、ドイツなどの西側とも全く違います。

欧米なんてものはなく、”ヨーロッパ”もありません。

それくらい、ビキニフィットネスは、東欧・ロシアの世界感で作られています。


2018年アーノルドクラシックヨーロッパ


遠い国に住む我々はSNSの情報に頼るしかなく、トップ選手数人を見て、これがビキニフィットネスだ!と思ってしまいがちです。

筋肉のカットや各部位の筋肉の形など、対象を研究しようとすればするほど、クロースアップして見がちになりますが、
木を一生懸命見ていても、森は見えません。


森を見るためには、森の中に入り、空気を吸い、温度・湿度を肌で感じ、時間や四季の変化を感じることで、少しずつ、森という木の集合体が分かってくるものだと思います。


文化も同じで、その土地で、そのモノや人に囲まれることで、初めて学びのスタート位置に立つことができると思います。



アメリカで食べる寿司が、なんだか違うのを考えても、文化を学ぶには、場所の影響がとても大きいということがよくわかります。


日本のビキニフィットネスは寿司で言うところのカリフォルニアロールなのかもしれません。

それはそれで美味しいけれど、寿司ではないと、私達は思います。

でも、日本に来たことがないアメリカ人は、あれを寿司だと思って生きています。



そのスタート位置に立てたのが、私にとっては去年のアーノルドクラシックの経験でした。

身体はそんなに劣っていないはずなのに、
存在感が圧倒的にかき消されてしまうような感覚。


言っていることはわかるのに、全然議論に入っていけなかった、留学中のゼミを思い出しました。(笑)



このヨーロッパでの経験は、今までの価値観が壊されて、ようやくビキニフィットネスを理解するためのスタート位置に立てた感覚でした。


そして、ヨーロッパ基準で競われる世界選手権で勝てる選手を選ぶためのオールジャパンですが、
審査員も、指導者も、選手も、その文化を肌で経験することは頻繁にできない中、
どちらがどうあるべき、という議論は、いくらやっても現実的ではないのかもしれません。




アメリカの寿司を日本の寿司に近づけたいと思ったら、
アメリカで寿司について考えていても、らちが明かないです。


これからのビキニフィットネスをより世界の基準に近づけていくためには、
より多くの選手、審査員、指導者が、東欧・ロシアのビキニフィットネスの肌感覚を持っていくことが求められていると思います。




そんな中で、日本の選手は何を目指せばいいのでしょうか?


今年のシーズンを終えて、課題がはっきりした人、逆にわからなくなってしまった人、様々だと思います。


成長に一番寄与するものは、おそらく”改善点の適切な解釈”だと思います。

身体をもっとしっかり作るのか、ダンスや体操など、他の要素を取り入れ始めるのか・・・

自分なりに解釈したもの
コーチが与えてくれるもの
競技仲間から教えてもらうもの

どんな解釈(ストーリー)を信じるかで、
競技に対する見方も、取り組み方も、そしてひいては結果も変わってくるんだと思います。





去年国際大会で、ある方にアドバイスいただいたこの一言が心に残っています。

「本当のトップ選手はその場に応じた勝ち方を選んで変えることができる」

”ビキニの本場であるヨーロッパの基準が全て”と思ってしまっていた今までは、思考が停止していたような気がします。


一流の料理人が、自分の味ではなくお客さんの求めるものに味や料理を変えたり、
一流のマーケターがターゲットによって戦略を変えるように、
一流のアスリートも、闘う場所によって勝ち方を変える必要があるんでしょう。


日本のビキニフィットネスで競うこと。

アジアのビキニフィットネスで競うこと。

ヨーロッパのビキニフィットネスで競うこと。

延長上にあるようで、そうではないのがこの競技の難しくもあり、面白いところだと思います。

おしまい。






PS.最後に、ビキニ競技についてよく聞かれることをFAQで書いておきます。
色んな方と話した上で私が思う個人的な解釈です。



Q:しっかり筋量をつけて絞ることが最低限?

A:毎年ハイレベルになっていく競技ですが、マッチョになればなるほど、絞れば絞るほどいいかというと、そうではありません。

個人的にビキニフィットネスは、ポーズをとらない状態で筋肉のカットやデフィニションは見えるべきではないと思います。
一見ゆるく見える身体から、ポーズをとったときに、一気に形ができる仕上がり。

ボディフィットネスの選手と仕上がりの身体を比べてみると、よくわかると思います。



Q:”傾向が変わる”は本当?

A:おそらくそれは、傾向が変わっているという理由付けで無理やり体系立てて理解しようとしているという要素が強いと、個人的に思います。

トレンドなど、細かいことに振り回される必要はあまりないと思います。



Q:”最初のワンポーズでだいたい順位が決まる”は本当?

A:トータルパッケージでの審査では、いいものは自然と目に飛び込んできます。
ワンポーズでほぼ順位の印象は決まると思います。


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